第1回 エッジAIとは?自動運転等活用を広げる技術の概要
この連載コラムでは、エッジAIを取り上げます。初回は下記に示した構成のうち、「1. 概要」をお伝えします。「2. AIモデル」からは次回コラムで、「3.AIモデルの最適化」以降はEureka Box(ユーリカボックス)に掲載中、無料で読むことができます。
本連載の構成
1概要
本コラムで解説します
2AIモデル
予測精度とパラメーター数、レイテンシについて、数多くあるモデルから実際にどうやって選択すればいいのか。
※次回以降のコラムで解説します
3AIモデルの最適化
AIモデルを最適化するための様々な技術、モデルサイズが小さくなることから、モデル圧縮とも呼ばれる、量子化(Quantization)・枝刈り(Pruning)・蒸留(Distillation)について。
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4AI実行環境
CPU、GPU、ASIC、FPGAの4種について、処理性能の比較など。
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5運用
エッジAIを開発して製品に載せた後の運用について、エッジAI用の運用プラットフォームとして提供されているサービス、Idein Actcast・NTT docomo EDGEMATRIX・・ソラコム S+ Camera Basicについて。
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6活用事例
インターネット上で公開されている活用事例、エコモット:エッジAIカメラ MRM-900・エアロセンス:エアロボ・アラヤ:自律ドローン・武蔵精密工業:AI 検品システムの紹介。
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7プレイヤーマップ
エッジAIに取り組んでいる企業まとめ。
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本連載は、次のような想定・目的で記述しています。
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目次
1. 概要
エッジでのAI市場の拡大
近年、AI技術、特にディープラーニングが大きく発展したことで、その技術をエッジ環境でも使用したいというニーズが高まっています。適用分野として有名なのは自動運転ですが、そのほかにも、ドローン自動制御や、ロボット、スマート家電、製品検査、行動監視(万引きの防止、客がどれだけ入っているか、家庭で人が倒れていないか…)などがあります。
また、エッジデバイスの数自体も、ここ数年、毎年20億台や30億台というペースで増えており、さらに今後も数年はその傾向が続くだろうと予測されています。
もちろん、そのデバイスすべてでAIが必要とされるわけではありません。しかし、成長率が高いと予測されている、医療、産業用途、コンシューマ、自動車・宇宙航空などの分野は、AIを必要としている、あるいはAIが有効活用できる分野と重なっています。ですから、今後エッジAIは大きく市場が拡大するだろうと考えられます。
エッジでのAIの利用
では、実際にエッジでAIを利用したくなったとしましょう。エッジデバイスでは、計算リソースや消費電力の制約が大きいためAI(特にディープラーニング)による推論を行うのは大変であり、そのためエッジからクラウド上のAIモデルを利用する方法がよく使われています。
これは、学習したモデルをそのままクラウドに置き、エッジで発生した、たとえば画像のデータなどをクラウドに送信して、クラウド側で推論する、という方法です。身近なところでは、スマートスピーカーの音声認識などがこの形式を利用しています。この形式によるAIの利用は、エッジデバイスのリソースが貧弱でもよい、エッジ側の消費電力が少なくて済む、AIモデルの更新の管理をクラウドで一括して行うことができる、などの利点があります。
エッジでクラウドAIを利用する場合の課題
しかし、以下のような課題もあります。
- レイテンシ:
リアルタイム性が求められる場合には、通信の遅延が問題になります。 - ネットワークの接続性:
常にデバイスがクラウドと通信できる環境とは限りません。たとえば、ある場所ではつながっても、つながらない場所にデバイスが移動することがあるかもしれません。あるいは、そもそもネットワークに接続できない環境に設置することも考えられます。 - ネットワークの帯域:
ネットワークに常に接続できる場合でも、帯域が十分に得られるとは限りません。ディープラーニングでは、画像や音声データを使うことがよくありますが、それらのデータをすべて送信していると、通信帯域が圧迫されます。また、センサーの計測値を送る場合など、個々のデータが少なくてもデバイスが多数ある場合には、データ量が膨大になり、帯域が問題になることがあります。 - セキュリティ・プライバシー:
セキュリティやプライバシー上の理由からデータをクラウドへ送信したくない場合があります。たとえば工場での製品検査にAIを使用する場合、製品の写真を撮ってクラウドに送信し、クラウド上で判定することになりますが、それは、開発中の製品の写真を工場から外に出したくないというセキュリティ面のニーズに反することになります。また、家庭内で人が倒れていないかを監視したい場合でも、家の中の写真をそのままクラウドに送信すると、プライバシーの問題が生じる可能性があります。 - コスト:
クラウドのサーバー費用と通信費がかかります。
Eureka Boxは厚生労働省が実施している助成金、人材開発支援助成金の適用対象となります。
エッジAIとは
こういった課題を解決するために、「エッジデバイス上で推論を実行しよう」というのがエッジAIです。
エッジデバイス上で推論を実行するので、推論のための通信が不要になり、ネットワーク関連の課題が解決します。
- レイテンシの改善が期待できる
- セキュリティやプライバシーに懸念があるデータでもローカルで完結できる
- ネットワーク接続が不要
推論をエッジデバイスで行う場合でも、学習も同じようにエッジデバイス上で行う必要はありません。状況に応じてクラウド上で再学習して、再度エッジデバイスにデプロイするという運用も可能です。
ただし、リソースの限られたエッジデバイスで推論を実行するためには、次の3点を考慮する必要があります。
- 軽量なAIモデル:計算量が少ない、メモリ使用量が少ない、ファイルサイズが小さいといった条件を満たすAIモデルが求められます。
- モデル最適化:推論の精度をできるだけ劣化させずにモデルを軽量化します。
- 実行環境:CPUより効率の良い推論環境が必要です。
では、この3点について、もう少し見ていきましょう。
エッジAIの技術
AIモデル
AIのモデル、特にディープラーニングのモデルには、精度とモデルサイズにトレードオフが存在します。ただし、近年では、高精度で軽量なモデルが活発に研究されています。
また、決定木やサポートベクタマシンといった古典的な手法であれば、計算量が少ないため、エッジのCPUでも実行可能です。
モデル最適化
モデル最適化とは、構築したモデルの計算量やサイズを削減するための技術です。代表的なものに、量子化、枝刈り、蒸留があります。また、エッジAI用の開発ツールによって、いくつかの最適化の機能が提供されています。
実行環境
CPUより効率的な選択肢には、GPU、ASIC(AIチップ)、FPGAがあり、CPUと比較した推論の性能は数倍から数十倍以上になります。
最近では、ベンチャーを含め多くの企業で、実行環境についての研究開発が行われています。
これからのエッジAIに求められる技術を知るには
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以上、連載第1回では、エッジAIの概要をご説明しました。次回はAIモデルについて詳しくご紹介します。執筆・文責:株式会社エクスモーション
私たちエクスモーションは、デジタル人材が不足する日本社会において、「組み込みソフトウェアに専門特化した事業」「専門性の高い人材」「ワンストップ支援」を強みとして、ソフトウェアが中心的な役割を果たす新しい世界に貢献しています。