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第1回 SDVの開発ポイントから領域まで

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第1回 SDVの開発ポイントから領域まで

SDV(Software Defined Vehicle)の開発は従来の開発スタイルのままでは困難です。このコラムでは、SDV開発が従来の開発とどのように異なるかと、求められる開発技術の概要を説明します。

はじめに

モビリティDX戦略、SDV開発に必要な開発技術
※引用 Eureka Box(ユーリカボックス)SDVにおける開発技術
https://member.eureka-box.com/products/10/categories/2155688261/posts/2180429396

SDV、Software Defined Vehicleは、「ソフトウェアによって定義されたクルマ」ですが、SDV車の定義については、経済産業省のホームページ "「モビリティDX戦略」"に次のように記載されています。

「クラウドとの通信により、自動車の機能を継続的にアップデートすることで、運転機能の高度化など従来車にない新たな価値が実現可能な次世代の自動車」

この記述において、開発面で重要なポイントは、

  • クラウドの活用
  • 継続的なアップデート

です。クラウドの活用、継続的なアップデートを可能にするためにはどのような開発技術が必要となるのでしょうか? 

ここでは、SDV開発のポイントを紹介します。 


SDV開発のポイント

SDV開発のポイント、スタンドアローンなクルマ、クラウドからのソフトウェアサービス
※引用 Eureka Box(ユーリカボックス)SDVにおける開発技術
https://member.eureka-box.com/products/10/categories/2155688261/posts/2180429396

先ほどの2つのポイントをかみ砕いてみましょう。「クラウドの活用」と「継続的なアップデート」は以下の3つに分けることができます。

1つ目は、これまでのスタンドアローンなクルマから、クラウドからのソフトウェアサービスと連携することがクルマの価値を左右するようになります。

これは、In-CarからOut-Carへの開発対象の「構成の領域が拡大」を意味します。

2つ目は、これまでスタンドアローンだった開発環境が、クラウド上に構築されシミュレーションや検証、デプロイまでクラウド上で可能になります。

これは、「開発環境の領域が拡大」を意味します。

3つ目は、これまで市場にリリースされたソフトウェアの更新は一部に限定されていましたが、ソフトウェアのアップデートにより新しい価値を素早く継続的に提供する必要があります。

これは、「機敏な開発スタイル」に変化する必要があることを意味します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。


構成の領域が拡大

SDVの構成の領域、In-CarからOut-Carに拡大
※引用 Eureka Box(ユーリカボックス)SDVにおける開発技術
https://member.eureka-box.com/products/10/categories/2155688261/posts/2180429396

これまで、クルマの機能は基本的にクルマ一台で完結する形で提供されていました。外部のモノとの通信は、VICSの渋滞情報やETCの料金支払いなど、機能毎に進化してきました。

SDVになると、クルマが1つのエッジデバイスとしてクラウドと繋がります。車両のデータをクラウドにアップロードしAIを活用した分析・制御、外部のモノとの協調など、Out-Car(クラウドなどの外部サービス)との連携によりクルマ単体ではできなかった、新しい体験・価値の提供などが可能になります。

また、クルマ単体のIn-Car(車両内部のシステム)のソフトウェアも更新が可能になります。例えば、カーナビの地図更新やソフトウェア不具合修正など既存ソフトウェアのアップデートによる使い勝手の向上や、新しいアプリケーションの追加が可能となります。このように、クルマの価値を継続的に向上させることができます。

このように、価値を提供するための構成の領域が車両内部のシステム(In-Car)+クラウドベースの外部サービス(Out-Car)へ拡大し、クラウドとの連携、AIを活用したデータ分析など必要な技術領域も拡大していきます。



 


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開発環境の領域が拡大

SDVの開発環境の領域が拡大
シミュレーションやデータ分析による仮説検証
※引用 Eureka Box(ユーリカボックス)SDVにおける開発技術
https://member.eureka-box.com/products/10/categories/2155688261/posts/2180429396

これまでの開発環境は、開発ツールをPCにインストールして開発する環境でした。これからは、クラウド上に開発環境を構築することで、開発、構成管理、ビルド、検証、デプロイまでクラウド上で行うことが可能になります。

クラウド上で開発を行うことで開発ツールのバージョン管理、更新を各PCに対して実施する必要がなく管理が容易になります。さらに、開発環境が標準化されることで環境が原因となるトラブルを抑制できます

また、オンプレミス環境では開発リソースを増強するには時間やコストがかかります。しかも、使用しない期間はリソースを余らせることになってしまいます。クラウド環境は必要なリソースを必要な分だけ利用することができるため、コストの最適化を行うことができます。例えば、自動運転機能検証を行うときだけ大規模規模シミュレーション環境をクラウド上の複数の仮想サーバーで構築することが可能です。

このように、開発リソースを柔軟に活用しコストを抑えつつ開発スピードを上げることができる、クラウドを活用した開発環境を構築・運用していく技術が必要になります。


開発スタイルが機敏に

SDVの開発スタイルが機敏
AIを活用したデータ分析
※引用 Eureka Box(ユーリカボックス)SDVにおける開発技術
https://member.eureka-box.com/products/10/categories/2155688261/posts/2180429396

これまでの車載ソフトウェアの開発は、要求される機能をすべて作り込み、ECUとしてリリースします。このようなソフトウェアは、すべての機能がモノリシックに結合されリリース後の更新も一部のECUに限定されていました。しかし、SDVの開発では価値を提供するソフトウェアを素早く継続的にアップデートすることが求められるようになります。例えば、AIを活用したデータ分析結果を次のリリースソフトに反映することができる機敏な開発スタイルです。

そのためには、ソフトウェアの構成をマイクロサービスとして個々のサービスを更新・リリースする必要があります。例えば、車内のエンターテイメントシステムに新しいアプリを追加する際、マイクロサービスアーキテクチャを採用することで、他のシステムに影響を与えることなく、簡単に新機能を導入できます。ソフトウェアの構成をマイクロサービスへ変化させるためには各機能が疎結合となる変更に強い柔軟なソフトウェアアーキテクチャの設計が必要となります。

また、ソフトウェアの開発からリリースまでのプロセスの高速化も必要となります。プロセスを高速化するためには、クラウド上に構築した開発環境を繋ぐパイプラインを設計し、ビルド、検証、デプロイまで自動化することができます。さらに、仕様書生成、添削、ソースコードの生成、テスト項目生成など開発のあらゆる場面での生成AIの活用することで開発を効率化することもできます。

このように、素早く継続的なアップデートを可能にする機敏な開発スタイルを実現するためには柔軟なソフトウェアアーキテクチャを設計する技術や、クラウドAIを活用したプロセスを高速化・効率化するための仕組みを構築する技術が必要になります。


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まとめ

SDV開発技術コラム初回は、SDVの開発のポイントと開発スタイルを解説しました。

  • 構成の領域が拡大:価値提供のためのプロダクトの構成領域が「車両内部システム」から「クラウド外部サービス」へと拡大
  • 開発環境の領域が拡大:開発で使用するリソース・ツールチェーンが「オンプレミス環境」から「クラウド環境」へと拡大
  • 機敏な開発スタイル:ソフトウェアアーキテクチャ構造の見直しやクラウド・AIを活用した素早く新しい価値提供ができる開発スタイルへと変化

従来のクルマからSDVに移行するために必要な開発技術がクラウドの活用柔軟なアーキテクチャ設計AIの活用へと拡大・変化していくことがお分かりいただけたかと思います。次回は、SDV開発技術のポイントについてより詳細に解説いたします。

株式会社エクスモーション コンサルタント 桜井 達也

執筆者プロフィール

株式会社エクスモーション エンジニア

桜井 達也

専門分野:

自動車、検証の自動化、生成AI

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